無理が通れば道理が引っ込む

2009-02-22 21:50:17

無理が通れば道理が引っ込む

 香川県立中央病院(高松市)で不妊治療を受けた女性患者に他人の受精卵を移植した疑いがあり人工中絶した問題は、担当医が1人で受精卵を扱う作業を続けていた環境がミスを誘発したとされる。こうした「1人作業」はほかの病院でもあり、現場からは不安の声が上がっている。背景には、人件費抑制で医師を補助する「培養士」の雇用が難しい事情もある。

 「昨年まで産婦人科の医師としてお産や手術、外来、中絶をこなしながら、1人で不妊治療にあたっていた。事故が起こらないかと怖かった」

 西日本の公立病院で、10年近く1人で不妊治療を受け持つ40代の男性産婦人科医は打ち明けた。受精卵や精子の取り違えを防ぐため、患者は年30人程度に抑え、作業には細心の注意を払ってきた。それでも1人の作業は不安だったという。

http://www.asahi.com/national/update/0221/OSK200902210050.html

 どうやらこの分野では労働安全の常識からすれば到底あり得ないような体制が当然とされてきたようだ。

普通の事業所ならば人命に関わる作業どころか軽い怪我のおそれがある作業でも1人でやることは避ける。

例えばまともな会社ならハシゴを使うような作業はどんなに簡単な内容でも二人一組とする規則を設ける。

そしてそのためのコストは当然のこととして顧客に相応の支払いを求める。

もちろんインフラ事業のごとく公共性が高い分野では民間企業であっても貧しい顧客から十分な支払いが得られないこともある。

 医療は基本的に公共性が高い分野とされている。

だがその中で特に公共性が高いものは生死に関わるかまたは重い後遺症につながる病気や怪我の治療である。

不妊治療にはそんな公共性がない。

厳しい言い方をすれば美容整形と同じ効果しかない。

例えば先天的な要因で容姿に恵まれなければ婚姻に不利であるから子供も出来にくい。

だからといって少子化対策のため政策医療として美容整形に公的支援を行うという話は常識的にあり得ないだろう。

同様の効果しかない不妊治療に公的支援をすることはそもそも不適切だ。

したがって公立病院であっても政策的な低料金で無理をして提供すべきサービスではないはずだ。

それなのに香川県はしかるべき料金を取らず、そのため安全上必要な補助者を配置することなく不妊治療を続けていたわけだ。

つまり香川の事故は表面上担当した医師個人のミスかも知れないが、本質は経営の問題である。

そして公立病院の経営責任は自治体にあるのだから、最終的には知事の政治責任ではないか。

おそらく県がそんな無理な経営をした原因は、科学技術の基礎知識がない議員らによって「東北大学で確立したならうちの県でも」といった無茶な要求があり、その時点の知事がリスクを考慮せぬままそれを現場に押しつけたからだろう。

結局のところ選挙に勝つためならと衆愚の無理な要求を安易に受け入れた政治家の姿勢がこんな事故につながったのだ。

要するに無理が通れば道理が引っ込むというパターンの典型だ。

記事のように何処の県でも同様な危険が放置されているなら厚労省の責任で止めさせるべきだ。

 例えば政治的圧力によって無理な低料金となりやすい公立病院での不妊治療は禁止しても良いだろう。

同時に民間施設に関しては作業過程の詳細や関わる人員の数と料金をインターネットで公開するよう義務づけたらよい。

情報が公開されれば安全性と料金の相関を誰でも容易に知りうることになる。

それでも敢えて安いところで不妊治療を受けようとする夫婦については何が起きても自己責任だ。

 


[ written by pinksaturn ]

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