そう簡単ではないワークシェア

2009-01-14 01:07:06

そう簡単ではないワークシェア

 従業員が仕事を分け合うワークシェアリングについて、舛添厚生労働相は13日の閣議後会見で「働き方の革命の一つ。景気が悪い時、一部の正規の人は普通通りやって、そうじゃない(非正規の)方々にしわ寄せがいくのはおかしい。社会的連帯が保てない」と述べ、導入に向けて議論すべきだとの考えを示した。
 過労死するほどの過重労働をしている人が居る一方で多数の無職者が発生している現状は、国全体のバランスから言えば明らかに人的資源を浪費しており非効率だ。
だが、いわゆるワークシェアリングはその現状に関してあまり即効性がない。
何故なら、過重労働になっている人の多くが専門性の高い職種だからだ。
例えば大量の派遣切りが問題になったトヨタやキャノンでも、研究開発部門などでは長時間残業が常態化している。
だからと言って大学で工学を学んでおらず流れ作業の経験しかない工場労働者をいきなり研究開発部門へ異動させても、出来る仕事はない。
また研究開発部門では成果主義賃金が導入されていることも多く、給与を簡単に時給換算できない。
つまり、今まで3人で8時間労働していたところを4人で6時間労働にし給与は3/4で我慢しようと言っても、元の4/4が人によって一定でないうえに個人業績による変動分を次期のボーナスに反映する後払い制の場合もある。
専門的な職種では裁量労働制が導入されて勤務時間自体が定められていない場合だってある。
勤務時間が決まっていない職種は根本的にワークシェアが難しいのだ。
研究開発以外で過重労働が問題化している職種といえば、医師や管理職などが目立つ。
医師についてはまず大学に行って資格を取らなければ出来ないから、年を食って新しいことを憶えるには不利な失業者を受け入れる大学が無ければ転業できないし、失業者が学費を払える手段も必要だから公的な制度を変えなければ不可能だ。現実に可能なのは派遣労働者から短期の訓練で資格が取れる介護職への転業を促し、増えた介護職の余力で看護師の業務を一部引き受け、看護師が医師の仕事を一部引き受けるというトコロ天式ワークシェアだが、それとて現状の線引きを少しでも超えるとその領域ごとに大きな技術的リスクが伴うから易しくはない。誰でも使えることになっているAEDですら非常時に実際使える人が何パーセント居るだろうか?。痰の吸引は、注射は、といった個別領域について技術的安全性をどう担保するのか明確にしないまま政治主導で強引に線引きをいじることは危険すぎる。
管理職についてはその所属組織に精通していなければ務まるものでないし、給与体系も時給制でない。
せいぜい可能なのは、外食チェーン店長などの名ばかり管理職に関して規制を強化して雇用を捻出するぐらいだ。例えば労基法で管理職の職務線引きを厳格化し、一般従業員やアルバイトが不足したため管理職が本来なら一般従業員のする現場作業に従事した結果一日の労働時間が8時間を超えたら割増の時間外賃金を支給しなければならないなどと規制すれば、企業は管理職の時給で時間外を払うよりは安いアルバイトを増やそうとするからいくらか雇用は増える。
 もちろんどんな専門性の高い職種でも仕事の全てが専門的なわけではなく、例えば研究開発現場だって外注や資材の管理といった事務仕事や試作品の工作といった労務仕事はある。社員の稼働を厳密に把握すれば全くワークシェアの余地がないわけではないのだが、企業がそれを真剣に行う制度的なインセンティブが無ければ実行不可能だ。
 結局、今の制度のままできるワークシェアとは工場派遣労働者同士で少なくなった仕事を分け合う方法しか無く、輸出依存度が高い日本の工業で今それをやれば1人当たりの仕事は生計維持に足りない量となる。
ワークシェアが雇用問題解決の万能薬であるかのような幻想は抱くべきでない。
根本的な解決は再教育システム整備による単純労働者から専門労働者への転換によらなければ不可能だ。

[ written by pinksaturn ]

この記事の記事カテゴリ
この記事へのコメント
[コメントを書く]
この記事へのトラックバック
この記事のトラックバックURL

http://maruta.be/marutatoieba/1014/tb/401JJL8IM8C64/確認キー